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松本大策のコラム
あきらめない!

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2018年3月19日

 今回のコラムでは、シェパードの流儀「あきらめない」についてお話ししたいと思います。

 診療していると、さまざまなやっかいな病気や難産に出くわします。自分の頭や経験で考えると「いや、これはもう無理だろう」と思うような症例に対して、僕たちは「あきらめない」を通すようにしています。というのも、牛さんの生命力、いや牛さんに限らないいろんな生き物の「命」の力というのは、僕たちの想像を超えるからです。

 今回写真でご紹介するのは、1年ほど前に顔面をひどく損傷し、目もつぶれたように思われる症例です。この子は、ローダーで敷料交換をしているところに頭を出してしまって、枠の鉄骨と重機で顔面を挟んでしまって顔が崩れてしまいました。もちろん顔面の骨折もあり食欲もなくなっていました。

 部位が部位ですからギプス固定も出来ません。とりあえず損傷部位の汚染もあったのでペニシリンを用い、疼痛抑制のために鎮痛剤を併用しつつ、骨の再生を促すにも有効な「肺炎後処置」を毎月実施しました。

 回復の話は伺っていたのですが、1年たって本人(本牛?)に会ってきたところ、損傷の後遺症も全くなく眼も回復していました。元気にしててくれて本当にうれしかったです。

 他にも、子牛の時に心臓の弁の異常音と心拍数が毎分120以上あった子が、ちゃんと肥育まで終了して出荷されていたり、1ヶ月齢で神経症状を起こして横倒しのまま、痙攣していた子が神経賦活処置とリハビリで元気に肥育素牛として出荷されていったり、ヘモで39日立てなかった(毎日チェーンブロックでつり上げてもらいながら治療して、倒れてから39日でようやく自力起立したのです)導入子牛が、最後まで肥育されて115万円で売れてくれたとか、牛さんの生命力に支えられたことがたくさんあります。こういう経験以外の新しい「無理だろ?これ」という症例もきっと牛さんが生命力で直してくれると信じて取り組みたいと思います。

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