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笹崎直哉のコラム
いざ直腸検査トレーニング その5

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2018年2月20日

 皆様お疲れ様です。先日肥育農家さんで小型但馬系の牛さんでよく見られる特徴的な「お尻」に出会いました。出荷前の牛さんとのことでしたが

こんなにもまん丸としたお尻に巡り合えたのは初めてで、見て見ぬふりができない笹崎は診療中であるにも関わらずしばらく凝視して感動しておりました。いや~遺伝子の力はすごいですね~。良い枝肉成績になるように願いつつ農場を後にしました。

 さて子宮蓄膿症と妊娠子宮の鑑別ですが、まず子宮の膨満度(大きさ)を考えてみましょう。妊娠子宮は通常単胎なので妊娠している子宮角がこのように胎子の周囲を胎膜が包み込み胎水で満たされ大きくなっているため、

左右不対称であります。子宮蓄膿症の場合は膿汁が子宮角全体に蓄積されるので左右対称に膨らんでおり、子宮頸管が開いているときなんかは膿汁が子宮頸管を通過し漏出するケースもあるので腟や外陰部にも膿汁が溜まったり、付着しているなんてこともあります。腟鏡を使って検査すると外子宮口(発情時にチェックするところですね)、腟壁(腟壁に膿が付着しているケースは意外と見落としがち)にへばりついてることがありますよ。

 では子宮壁はどうでしょうか?子宮蓄膿症の場合多くの場合子宮壁は弱っており、菲薄化しているときが大半で、収縮力も欠けているため直検時はお母さん牛の腹底に向かって子宮が垂れ下がっているので比較的わかりやすいですよ。

 次に子宮動脈についてです。妊娠3ヶ月齢を過ぎてくるとチェックが可能です。子宮広間膜と呼ばれるところを子宮動脈(中子宮動脈)が前下方に進んでいくのですが、その子宮動脈の肥大と振動が直検を介して確認できるのがこの時期なのです。この子宮動脈は左右存在するのですが、基本的には妊娠している子宮角側の動脈が発達します。そう考えると双子ちゃんの診断にも有用かもしれませんね。子宮蓄膿症、つまり非妊娠牛の場合は、この子宮動脈は左右ともに発達していないので動態を確認するのは難しいです。不安な方は分娩前のお母さん牛で練習して確認してみると良いと思います。

つづく

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