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松本大策のコラム
質問箱から(その17)~子牛の肺水腫~

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2018年2月19日

◎今回は、知り合いの営業マンから来た質問です。

ご相談内容

 A農場に行ったところ、農場主さんがインフルエンザで寝込んでいる間に、子牛が重度の肺炎に陥っていたとのお話しがありました。
 今朝の体温は40度ちょいで、丁度獣医師の先生が来てくれたので診ていただいたら、かなり肺炎が酷いとのことで、バイトリルとパンカル、ビタミンEを処置されたとのことです。もしかしたらデキサも混ぜたかもとのことです。ビデオを添付します。

回答

 これは悪いですね。肺水腫といって、重度の肺炎(とくにRSウイルス等の時に多く見られます。)で見られる症状の1つなのですが、なにしろ肺の中が水浸しなので「自分の中で溺れる」という状況でしょうか。とてもデリケートな(危険な)状態ですので、いくつかの注意点と処置の方法があります。

 まず、決して一般の補液はしないこと。肺水腫を悪化させます。子牛では、たった20mlの血管注射で死亡する場合もあるほどです。

 あとは、可能なら高張食塩水(ゼノアックの7%)を300ml(体重100kgあたり1リットル程度)、5分程度の高速で静脈注射し、血液の浸透圧を急速に上げて、肺の水(炎症物質を含む)を血液に吸出します。

 次にそれを排泄するために、皮下補液でリンゲルを1~2リットルほど入れます。。出来たらラシックスなどの利尿剤、なければアンナカを10ml皮下注します。

 デキサを3ml1日、2ml3日、1ml2日使い続けます。

 抗生剤は、タイアムチン注とセファガードもしくはコバクタンを併用しましょう。この農場はマイコプラズマも入っていますから、マイコプラズマとマンヘミアがすでに混合感染している可能性が高く、また、マイコプラズマはセファガードに反応しないため、コバクタンやセファガードとマイコプラズマ対策のタイアムチンの併用が支障にならないからです。コバクタンやセファガードは、マンヘミア対策です。

 この農場には、溶接用の酸素ボンベがあったと思います。ほんとは酸素マスクも使いたいとこですが、レギュレータがないと酸素マスクは使えませんから、ハッチをビニールで覆い、酸素ボンベからその中に適当に酸素を吹き込んで、空気の中の酸素分圧を上げてあげましょう。

 原発はウイルスだと思いますから、肺水腫が改善したら輸血してあげるのがよいと思います。そこを繁殖検診しているT先生は輸血もとてもうまいですよ。

その後

 子牛も2日でここまで回復してくれました。めでたしめでたし!

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