(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
質問箱から(その16)~心不全のおはなし~

コラム一覧に戻る

2018年2月16日

◎ご質問・ご相談コーナーへご投稿をいただいた質問と回答の内容をご紹介いたします。

ご相談内容

 以前私が勤めていた別の牧場では、死亡診断書によく心不全と書かれていました。今勤めている牧場では獣医師を呼ぶことはほとんどありません。死亡原因に心筋梗塞などあるのでしょうか。

回答

 よく、「死ぬときは心臓が止まるのだから、死因は心不全でかまわない」みたいなお話を耳にしますが、正確に言えばこれは誤りです。正常な心臓で、なにかの原因で死亡する場合、最後に心臓はドクンと収縮してから動きを止めるのです。

 しかし「心不全」の場合は心臓が収縮出来なくなります。つまり、心不全以外で死亡した場合は、心臓がドクンと収縮して死ぬので、心室(心臓の中の血液がたくさんあるところ)、とくに左心室にはほとんど血液が入っていません。

 心不全での死亡の場合は、心臓が収縮せずに死ぬので、心室内に血液がたくさん残っているのです。ですから、心不全という診断を付けるには、解剖して「心室内血液多量残存」という状態を証明しなければならないのです。

 なぜこのようなお話しをするかというと、死亡牛がでた場合、その死因を徹底して究明することは、その農場のリスク管理上も経営改善上も、とても重要なことなのです。ですから、安易な死亡検案をするのではなく、きちんと死因を究明するべきだと考えているのです。

|