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松本大策のコラム
牛さんと癌 その2

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2018年1月15日

 前回は肥育牛で「癌」がなぜ少ないか?というお話しでした。寿命が短いから、癌が育つ暇がないというのがその理由でした。

 今回のお話しは、それなら寿命の長い繁殖牛や種雄牛でも、癌が少ないのはどうしてなのか?というお話しです。それは、身内の恥みたいですが、「癌」という診断を付ける診療器具が獣医師の元になく、たとえば皮膚癌(メラノーマなど)や、目や耳の扁平上皮癌などの表面に出ている癌や、白血病の際に出来る悪性リンパ腫のように皮下で触知できたり、直腸検査で見つけられたりするもの、「癌」ではありませんが、直腸検査で見つけられる腹膜に出来る悪性中皮腫などしか見つけられていない、という状況があります。開腹手術の際に見つかることもありますが、「経済動物(僕はこの言葉は大嫌いです)」なので、開腹手術や確定診断までいたらず廃用になってしまう牛さんが多いことも1つの原因です。

 ただ、1つだけ農家さんでも気づく「癌」があります。放牧しているお母さん牛で血尿が出たときは、直腸検査や尿検査をしてもらいましょう。放牧地に「ワラビ(写真:ネットから引用)」が生えていると、牛さんがその若芽などを食べることが原因で、膀胱に癌が出来るのです。癌が出来ると、癌本体を養うためにたくさんの血管が出来ます。これがもろいので容易に出血を起こし、血尿となるのです。重度になると血がそのまま出てきたり、血の塊で出てきます。それでも僕たちは手術で治すことは出来ません。でも早期なら、出荷してお肉にしてあげられる可能性があるのです。

ワラビの写真(ネットから引用)

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