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松本大策のコラム
牛さんの体温が38.5℃という意味 その2

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2017年12月15日

 前回は牛さんの体温が、人間よりも2度以上高いのはなぜか?というお話をしましたが、人間でも風邪の時は熱を下げた方がよいか、下げない方がよいか、よく議論されますよね。牛さんについても同じような議論がなされます。

 僕自身の考えは「つらかったら下げてあげた方がよい」というものです。これは自分の体験に基づいています。1週間、40℃以上の熱を出したまま東北地方を巡回したことがあります。夜になると発熱に伴って、体中痛いし寒気はするし、熱のせいで吐き気も出るし。でも、座薬を入れると20分もしないうちに汗がドッと出て、体中がすうーっと楽になります。ほぼ正確に6時間すると寒気がしてきていましたから、座薬(ジクロフェナク)は6時間効果が続くのだな、ということを身をもって知ることが出来ました。そういう状態で「熱を下げてはいけない」というのは、患者の防御力をかえって下げてしまうことになると思います。逆に、「別に熱が出ているだけでつらくもなんともない」というときは、ウイルスや細菌などの病原体をやっつけるには好都合ですから、そのまま放置していいと思います。

 いろいろな治療方針で「これが正解だ!」なんて議論が交わされますが、それぞれのバックグラウンドや前提条件を加味しなければ、正解は出ないと思いますし、私たち人間が「絶対の真理」などということ自体、おこがましいのではないかと思っています。

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