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戸田克樹のコラム
第165話「身近な解熱鎮痛剤⑪」

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2017年12月13日

ラニーニャのせいで大寒波が来ています。助けてください。寒いです。
 
 
なぜNSAIDsなるものが生み出される必要があったのでしょう。
ステロイド剤は強力な抗炎症作用のある薬剤ですが、その一方で副作用も存在します。

1.易感染性(感染しやすい状態)になる
ウイルスや細菌などの病原体と戦ってくれる白血球は普段血液の中を流れています。組織に侵入した病原体をやっつけるために血管から組織へ出ていかなければいけないのですが(これを白血球の『遊走』といいます)、ステロイド剤の投与はその動きをにぶらせる副作用があります。ちなみに、ステロイド剤の連投による易感染状態に陥ると、こうした白癬を引き起こすこともあります。

2.消化管潰瘍
痛みのもとになるプロスタグランジン類ですが、その一部には消化管粘膜保護作用のあるPGE2というものも含まれています。ステロイド剤はプロスタグランジン類の製造を一様に止めてしまうので、このPGE2も製造がストップしてしまいます。すると、消化液や食塊で粘膜が痛みやすくなり、潰瘍の形成や粘膜出血が起こりやすくなります。その結果、消化管内における出血を引き起こす可能性もあります。

代表的な2つを紹介しましたが、他にもいくつかの副作用が存在します。
こうした副作用が存在するがゆえに、ステロイド剤に代わる抗炎症剤の開発がすすめられたのでした。

※副作用を紹介する内容となりましたが、基本的にどの薬剤にも副作用は存在します。投与量や投与期間、投与頻度などを守り、適切な使用を心がけていれば、今回紹介したような副作用も基本的には生じません。薬を使う側(わたしたち人間です)の適正使用が何よりも大切なのです。

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