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松本大策のコラム
質問箱から(その6)~左後足の指先骨折の牛さんがいます~

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2017年12月1日

◎ご質問・ご相談コーナーへご投稿をいただいた質問と回答の内容をご紹介いたします。

ご相談内容

地元の先生の診察で左後足の指先骨折の牛さんがいます。治療を何度かお願いしたのですが、状態がよくなく改善しません。

生後月齢19ヵ月齢の宮崎中央市場導入のメス牛さんで、11月14日から足の状態が悪かったという話です。はじめは5頭で飼っていましたが、17日に独房へと移動したそうです。

治療歴は、
16日 デキサメタゾン注射、アンドレス軟膏
17日 デキサメタゾン注射、アンドレス軟膏
18日 アリナミン・テルペラン・イプコン・インタゲン・デキサメタゾン注射
20日 38.6℃アリナミン・テルペラン・イプコン・インタゲン・デキサメタゾン注射、アンドレス軟膏
22日 アンドレス軟膏(私が初めて牛さんの状況を見た日です。)便がややゆるく感じましたが、便の色はそれほど気になりませんでした。
23日 39.8℃黄色がかった下痢、地元の獣医師にアリナミン・テルペラン・イプコン・バイトリル・デキサメタゾン5ミリリットルの注射。
24日 39.2℃
27日 39.5℃
28日 39.6℃

25日から現在まで下痢が続いているためアースジェネターを10g経口投与しています。
配合は以前日量10㎏群で食べていたそうですが、今現在日量2㎏といったところです。粗飼料もほとんど食べていないようです。水は多少飲みに立ってきていますが日に日に痩せてきているのがよくわかります。
どうにか回復してほしいです。
動画と便の画像を送ります。

何かよい治療方法がありましたら、教えて頂けると幸いです。
よろしくお願い致します。

回答

これはご心配ですね。
食欲低下が、消化器系からのものか、足の痛みによるものか、まず診断しなければなりませんね。
消化器粘膜が痛んでいる場合、これ以上デキサメサゾンの投与は続けない方がよいと思います。

まずは、左後肢の蹄から中足の一番上までを軽量ギプスで固定してはいかがでしょうか。これによって、足の傷んだ部分に体重のかかる割合が減らせるので楽になると思います。足について内科的に補助するとしたら、ビタミンD、エルカトニン(カルシトニン剤)、プリモボラン(タンパク同化ステロイド)、カルシウム剤などを用います。

次に、消化器に問題がある場合は、粘膜修復剤としてビタミンAと亜鉛の注射を使います。ビタミンAはゼノビタンでもフォルテでもかまいません。亜鉛製剤は、通常ならドン八ヶ岳(ゼノアック)をお勧めするのですが、粘膜が傷んでいると、吸収に不安がありますから「ボルビサール注」という人間の中心静脈栄養に使う注射剤の静脈注射(10アンプル/日)がよいでしょう。
それと、粘膜修復剤として人間でよく使われる「ノイエル」というお薬(10袋/日)もよいと思います。アースジェネターは続けてください。人間のキャベジンなどもMMSCという粘膜修復剤を含みますからよいと思います。

地元の獣医さんに、「出荷制限指示書」という物を書いていただくと、上記のすべての薬剤が合法的に使用できます。お手軽には、人間の胃腸病に効くという温泉が近場にあれば、そのお湯を飲ませるのもよいです。

それからデキサによる免疫抑制の影響で、コクシジウムが暴れている可能性もあります。エクテシン液を50ml、2~3日経口投与しましょう。

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