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蓮沼浩のコラム
第484話:手術室

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2017年8月31日

 「蓮沼先生は本が好きみたいだけど、どんな本がいいんですか?」という質問があります。それこそお勧めしたい本は山ほどあります。そんな中で今回紹介させていただく本はマルクス・アウレリウスの書いた「自省録」。プラトンが最高の政治形態であると言った哲人政治を初めて実現したローマ皇帝マルクス・アウレリウスが書いた本です。ローマ帝国の皇帝としてあらゆる困難に直面した中で書いた彼の心の内側。ストア哲学に裏打ちされた魂の声を聴けます。いつも死にそうになっていた大学生時代の蓮沼青年が生きる力をもらい、社会人となってあまりにも凄まじい困難の連続で涙を流して心が砕けてしまった新人獣医師の蓮沼青年が涙を拭いて立ち上がり、人生の指針を見失い呆然として立ち尽くした蓮沼獣医師がローマ皇帝の悩みに比べたら小生の悩みなど屁みたいなものだと開き直って前を向いて歩く。現在まで色あせることなく読み続けています。何回読んだかわかりません。約1800年前の世界一のローマ帝国の皇帝の心をわずか600円ぐらいで勉強できる日本という国は本当に恵まれています。

 空調の効いた、快適な温度の明るくきれいな衛生的な手術室。周りには様々な手術用の器材がたくさんあります。手術をする牛さんは麻酔がしっかりと効いていて、人工呼吸器や心電図がついています。そして美人な看護師さんが横にいて、エレガントに手術をしています。助手の獣医さんもたくさんいて、手術も無事成功し、美人な看護師さんから「蓮沼先生、お疲れ様です!」などと言われます。
 
 
 
え~~~~~と、すべて妄想です!!
 
 
実際の小生の現場と言えば・・・・・

電気も暗く、ほこりだらけで、牛さんは暴れて、最大限衛生的にできるようには努力していますが小動物の世界とは比べようもなく、美人な看護師さんなんているわけもなく、タバコ吸いながらズボンのチャックが全開の農家のおじちゃんが横にいて、ついでに小生のズボンのチャックも全開で、そんなのどうでもよくて、汗ダラダラながして、やべ~やべ~と言いながら、必死こいて、全力で、絶望的な状況もあり、それでもやるしかなくて、やるせなくて、自分の未熟さを嘆き、それでも少しでも農家さん、牛さんのためにと思って、ひーひー言いながらやっています。
 
 そんな中先日ある農家さんへ行くと、笹崎獣医師がヘルニアの手術をしていました。炎天下の中、農家さんの運動場で直射日光を浴びながら、汗だくになって頑張っています。もちろん、先ほどの私の妄想の世界とは全く違います。一番シュールだったのは現場に不似合いなビーチパラソル!ハイレグビキニのF1レースのレースクイーンが横に立っていれば何だか絵になるのですが、残念ながら横にいるのはパンチパーマの農家さんです。でも、手術中に頑張っている笹崎先生を気遣って場違いなビーチパラソルを差してくれる優しさが本当にいいですね。手術室にちょっとあこがれちゃうけど、こんなビーチパラソルもいいかもしれない(笑)。


おしゃれなパラソルが際立つ、とてもシュールな手術室です!

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