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松本大策のコラム
外部寄生虫もバカにできないよ!(写真大盛り!!)

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2017年8月18日

 みなさんちの牛さんは、背中や内股、脇の下などかゆがっていませんか?ちょっと前に、「ちょーキモチいい!」というコラムで動画を載せましたが、ああいうカユミはダニとかシラミによるものが多く、次いでサシバエの咬傷、それらと真菌(白癬菌)の混合感染も見られます。

 ただ、この中で、防ぎやすいのに意外に放置されているのが「シラミ」と「ダニ」です。牛さんがかゆがっている辺りを触ると、かさぶたのようなガサガサがあることが多いのですが(写真1)、その周辺をよく見るとシラミが見つかることが多いです(写真2)。もっとも、よく見かけるのは吸血しない「ウシハジラミ(写真3)」です。こいつらは、牛さんのフケとかを食べるのですが、アレルギー反応で皮膚炎を起こします。


写真1


写真2


写真3

 なかなか見つからないのですが、吸血性の「ウシホソジラミ(写真4)」というのもいます。こちらは、吸血するだけに、少数寄生でも牛さんの毛が抜けてしまいます。ただし、かさぶたを作ることはあまりありません。カユミが強いのは「ウシハジラミ」と同じです。


写真4

 「ダニ」がいるというと、みなさんは山登りの時などに吸い付いている「マダニ」のような大きいものを想像なさるかもしれませんが、放牧していない牛さんの場合、問題になるのは「ショクヒヒゼンダニ」という目に見えない大きさのダニです。もちろんマダニ類もピロプラズマなどの病原体を運びますし、最近はヒトでもマダニに咬まれてウイルス病が問題になっていますが、今回は皮膚病のお話しですから、マダニのお話は別の機会にします。

 ショクヒヒゼンダニは、顕微鏡で見ないと見えないくらいの大きさですが、顕微鏡でよく見ると怪獣のような姿をしています(写真5)。


写真5

そして、このダニに寄生されると皮膚がガサガサの象の足みたいになったり、全体的にかさぶた状になったりします(写真6、7)。そしてめちゃくちゃカユミも強いです。


写真6


写真7

 カユミだけでも相当なストレスで、肉色やしまりへの悪影響は容易に想像できます。しかし、もっと恐ろしいのは、その皮膚炎を放置すると、そこからバイ菌が入ってフレグモーネといって、一種の化膿症を引き起こし、僕が見たもっとも重症例では、枝肉の半分が廃棄になってしまいました(写真8)。


写真8

 だからといってイベルメクチン製剤(主に内部寄生虫を殺す薬ですが外部寄生虫にも効果はあります)を安易に使ってはいけません。僕の経験では、こういうダニやシラミの被害は中期以降の牛さんで多く見かけます。そういう牛さんに対して、出荷規制の長いイベルメクチン製剤を使うのはリスクが大きいです。万が一、骨折しても出荷できませんからね。

 こういう症状には、ネグホンの水和剤かバイチコールを使いましょう。バイチコールの方がより出荷規制が短い(2日)です。似ている薬もいろいろと出ていますが、僕は使い比べてバイチコールの評価が高いです。値段も高いですけどね(笑)。ご自分でいろいろと試してみられるとよいと思います。ただし、出荷規制の長いものだけはやめておきましょう。

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