(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
笹崎直哉のコラム
Strategy(6)~貧血~

コラム一覧に戻る

2017年6月6日

 皆様お疲れ様です。突然ですが、先日足を故障しました。左の内股です、、、絶賛青アザを形成中です。実は出水市と宮之城町の夏祭りで控えているダンスの発表会に向けて必死に練習していたら床に足をぶつけてしまったのです、と言いたいところなのですが、全く関係ありません。とある日に生後3日目の鉄剤ビタミン注射を子牛に実施する際に不注意でお母さん牛に蹴られてしまったのです。あまりの痛さに倒れ込み悶絶しました。近くにいた農家さんには「先生がいなくなったと思ったら床に倒れていて、たまげた」と言われてしまいました。有難いことに保冷剤とシップを準備して下さり、しばらくその場でアイシングさせてもらうという始末。農家さんの優しさに感謝でした(床替えしたばかりのクッション性、清潔感ともに抜群の牛床にも感謝でした)。本当に大馬鹿者ですね。今後はこのようなことが無いよう精進して参ります。その日は1日中この失敗を精神的に引きずり、歩くたびに故障した足も引きずり、とんでもない日でした。ああ情けない、、、

 今回の貧血シリーズは赤血球の産生低下(産生障害)によるものです。代表的なものを挙げるとすると「鉄欠乏性貧血、栄養障害性貧血」がこれに匹敵します。
 鉄欠乏性貧血は生まれたばかりの子牛が迎える生理的貧血と同じものです。ここでお母さんのお腹の中で育っているときの胎子をイメージしてください。その時は胎子ヘモグロビンといって母体由来のヘモグロビンをもらっているため、安心です。しかし出産後は①赤ちゃん自身の力でヘモグロビンを作っていかなければならない②今まで頼りにしていた胎子ヘモグロビンが壊れやすいという理由でどうしてもヘモグロビンの源となる鉄が不足してしまいます(ちなみに豚さんではこの状態が顕著に現れるため鉄分の補充は昔から必要不可欠です)。成牛であれば、毎日食べている牧草の中に鉄分が十分含まれているし、ビタミンB群の合成を第一胃で自然にしてくれているので心配ご無用です。
 恐ろしいのが、子牛の白痢が発生しやすい1週間~3週間齢と今回紹介した生理的貧血の時期が被ってしまうことなのです。その時期はもちろん赤血球の酸素運搬能力が落ち込んでいる訳でありますので、病気に対する抵抗力がグンと下がり、易感染状態になり、気がついたときには発育不良の子牛に、、、

 血液検査データからしても白血球数が慢性的に上昇し病気に陥っている子牛は必ずといっていいほど血中のヘモグロビン濃度は下がっています(今までのデータを見返してみたのですが本当にそうなのです)。
 そこでこの事件を防ぐために誕生したのが「子牛の鉄剤ビタミン注射」なのです。

つづく

|