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蓮沼浩のコラム
第471話:お臍考 その3

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2017年5月25日

 出張に出る時はとにかく時間が出来れば本を乱読多読します。飛行機、新幹線、宿泊先などでだれにも邪魔されずに思いっきり読書ができるのは最高に幸せですね!

 さて、前回までに臍静脈と臍動脈に関してお話ししました。今回は最後のお臍につながっている尿膜管についてお話ししてみましょう。この尿膜管は子牛のお臍から膀胱へとつながっています。基本的には子牛が産まれる時にはこの尿膜管はすでに管は閉鎖されて、膀胱に靭帯としてくっついているだけになっています。そして、子牛が成長するとともに退化していきます。しかし、数パーセントの割合でこの尿膜管が大きく残っている場合があります。

 症状はそれこそ多種多様。ひどいものになると、お臍からおしっこが出てきます。また、多くの場合臍帯炎を併発しています。中が化膿している場合も多く、お腹の中に膿瘍を形成している場合もあります。診断は子牛のお中の深部触診でかなりはっきりと付けることができますし、エコーで見てもいいですね。

 治療は程度にもよりますが、基本的には最初は抗生物質の投与で対応します。軽症であれば子牛が大きくなるにつれて自然にこの尿膜管が閉塞し、問題なく子牛は成長していきます。しかし、中には症状が全く改善しない例もありますので、そのような時は手術適応となります。手術は基本的に傍正中切開にて行います。緊急を要する場合は少ないので、子牛の状態を見ながら対応することが多いですね。癒着が酷い場合が多いので、手術は時間がかかる場合が結構あります。

 ただ、このようにお臍に臍帯炎があったり、腫脹していたりする異常が認められる場合はいいのですが、外見上正常に見える場合が厄介です。時々子牛の激しい疝痛症状などの原因がこの尿膜管遺残の場合があるので子牛の疝痛などの場合は必ず頭の片隅にいれておきたい疾病ですね。どんな稟告でも、子牛の診察では必ず臍帯の触診を忘れずに!

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