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松本大策のコラム
牛のジンマシン?

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2017年5月22日

 みなさん、ジンマシン(蕁麻疹)という言葉はよく知っていますよね?かかったことはありますか?(僕はあります。全身真っ赤でした)
 テレビドラマや映画などでも、よく「うわ、俺子供に触られると蕁麻疹が出るんだ。」とか「テストとか聞くと蕁麻疹が出ちゃうよ」なんて台詞を聞きますが(聞くか?)、意外に実際にはどういう病気なのか、知られていないように思います。みなさんはご存じですか?

 ジンマシンというのは、皮膚にある「肥満細胞(名前に肥満とつきますが、肥満とは関係ありません。マストセルという呼び方の方がいいかな)」という細胞から「ヒスタミン」という毒物が過剰に分布されて、赤くなったり腫れたりする状態です。原因はさておき、虫刺されの時に赤く膨れてきますよね?あれも、虫の毒に反応してマストセルからヒスタミンが分泌されて起こるのです。ですから虫刺され軟膏には「抗ヒスタミン剤」というものが入っていますよね?実は、この抗ヒスタミン剤というのは、市販の風邪薬の中心成分でもあるのです。マストセルから分泌される「ヒスタミン」は、風邪の時にも分泌されて様々な症状を引き起こします。ジンマシンの一番の原因は、なんと「風邪」なんです。他にもいろいろなアレルギーによっても引き起こされます。
 ルーメンアシドーシスによって起こる、牛さんの食餌性蹄葉炎の直接の引き金もヒスタミンです。ですから軽度の症状であれば、抗ヒスタミン(ジフェンヒドラミンやマレイン酸クロルフェニラミン)などのお薬を使いますし、重症のものにはステロイド剤というものを使います。

 先日、「首の下(下顎部)の腫れが繰り返し出てくる」という相談をいただき牛さんを見に行きました。普通、こういうときに見られる不整脈や頸静脈拍動などの異常は見られませんでしたが。あることに気づきました。僕は牛さんの診察の際、牛さんが怖くないように背中などを掻いてあげるのですが、その掻いた部分が腫れ上がってきたのです。
 症状的には「ジンマシン」と同じだと思い、身体のいろいろの部分をひっかいてみましたが、ほぼ全身にこの反応が出ました。おそらく風邪や免疫の一時的な異常でヒスタミンの分泌過剰が起こっているのだろうと思いましたが、下顎部の浮腫が重度でしたから、何らかの免疫異常疾患があるのかもしれず、将来性が判断できなかったため、主治医と相談して返却することになりました。

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