(有)シェパード[中央家畜診療所]がおくる松本大策のサイト
松本大策のコラム
いまさらタンパク質のお話

コラム一覧に戻る

2017年4月24日

 みなさん、季節の変わり目ですが、皆さんも牛さんたちもお元気ですか?
この季節は、口蹄疫発生要注意期間です。心を引き締めて再度貿易体制の見直しをしておきましょうね。

 さて、今日は、いまさら?と言われそうですが、飼料や牛さんの体内のタンパク質のお話です。タンパク質といえば、身体の材料ですよね?筋肉はもちろん、骨格や内臓も、それから消化や呼吸の時に使われる酵素も、さらには免疫の主体である「抗体」も、すべてタンパク質から作られるものです。

 それでは、タンパク質をたくさん与えれば、牛さんも大きくなり、酵素や免疫も強くなるのか?といったら、それは間違いです。
 タンパク質が上手に利用されるためには、まず気候・気温にあった適切なカロリーとのバランスが必要です。タンパク質だけたくさん与えても、一生懸命消化されて吸収されたタンパク質は身につかないで、かえって害のある老廃物(アンモニア)になってしまいます。こうして発生したアンモニアが繁殖障害や尿石症の原因になることは、これまでも何度もお話ししてきましたね。一例を挙げると、冬場に牛さんがなんだか痩せたような絞れたような状態になることがありますよね?このとき「あれ?タンパク質が足りてないかな?」とタンパク質を増やしてしまったらどうでしょう。雌では繁殖障害や肉色の悪化、去勢牛では尿石症が発生するだけで、牛さんの痩せは改善しません。これは、寒さのために体温を維持するカロリーが不足するために、タンパクを身につけるためのカロリーが不足して痩せているのです。ですから、正解はカロリーを増やしてあげるべきなのですね。タンパク質だけ増やすと、さらに老廃物のアンモニアが増えて、余計にやっかいなことになるのです。

 このほかにも、与えたタンパク質を上手に利用させるためには、いくつか必要なことがあります。1つはビタミンAやビタミンD、これらのビタミンが不足していると、せっかく与えたタンパク質と、それを身につけるカロリーがあっても、「タンパク質を身につけなさい!」という指示を出す「タンパク同化ホルモン」というものがうまく分泌されないために、やはりタンパク質は利用されずに老廃物のアンモニアの被害が増えるのです。

 そのほかによく見かけるのは、肺炎などのいわゆる消耗性疾患の後に、やはりタンパク同化ホルモンが不足して、タンパク質が利用されないケースです。

 牛さんでは、さらに分解性タンパクと非繊維性炭水化物のバランスというのも重要ですが、ここは何度もお話ししているので、過去のコラムや桐野獣医師のコラム(懐かしいでしょ?)をさがしてみてくださいね。

|