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戸田克樹のコラム
第108話「こんなときの血液検査⑥~食欲がないPart 6~」

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2016年10月25日

 朝が寒いです。
仕事用の服も、ついに半袖から長袖に、さらにはパーカーとか羽織ってしまうようになりました。夏に弱い戸田は冬にも弱いです。これからどうやって冬を越せばいいのか、すでに途方に暮れています。トホホ…。
 
 
 経口的に摂取されたクロールは、その他の栄養分と同じように小腸で吸収されていきます。
そして腎臓を経由して不要な分はおしっことして排泄されます。

そういえば、胃酸の化学式を見てみると、HClと書かれています。胃酸にもClは含まれているんですね。
体を巡ったクロールは一部が胃酸の成分となって胃に分泌され、再度消化管を通るため、また吸収されるのです。

では、消化管のどこかが詰まってしまっていたり、動きが悪くなっていた場合はどうでしょうか。
胃酸として分泌されたクロールや、塩として摂取したクロールがうまく腸までながれません。口からは摂取しても、体内への吸収ができないのです。その結果、血中クロール値が低い数値となって出てきます。

四胃捻転
腹膜炎
腸閉塞
などの通過障害が疑われますね。それはそれは重大疾病ばかりです(汗)。

でも、この患畜が妊娠していたのを覚えていますか?
数は多くないのですが、妊娠末期に食欲不振を示し、さらに血中クロール値が低い(通過障害を示唆された)患畜には以前も出会ったことがありました。
大きな子牛が腸管の動きを妨げてしまっている可能性は十分に考えられました。
分娩予定日までもう数日。補液を続けると、少し食べるようになりました。

分娩前にオペもできないし、出産まで内科的治療で安静に行きましょう。

そして数日後、予定日より早く陣痛が来て、いよいよお産でした
結果、でかい!!!!!とにかくでかい!!!!!!!!!
そして残念ながら写真がない!

原因は子牛でした。過大子牛でした。
分娩後、食欲は少しずつですが回復。翌日にはいつもと変わらない量をたべるまでに回復。

改めて、お産という人生のイベントが命を懸けたものなんだと実感した症例でした。

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