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戸田克樹のコラム
第107話「こんなときの血液検査⑤~食欲がないPart 5~」

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2016年10月18日

 各地で稲刈りが始まっております。
週末になると数台、車が路駐され、刈り取り作業をみんなで頑張っております。
秋ですなぁ

 食欲不振の原因が低カルシウム状態にあったことが確定しましたが、もうひとつ目につく値がひとつ
それがこちら

血中のクロール値です。

クロール?
からだを伸ばして水面にうつ伏せになり、両腕を左右交互に抜いて水をかきながら…
っていう水泳の授業で習う泳ぎ方ではありません(笑)

血液中に存在している塩素イオンのことで、化学式ではCl⁻と表記されます。

基準値はだいたい100~110 (mEq/L)程度です。
検査結果の数値は89.0mEq/Lです。低いですねぇ…。

このクロール値、体内では調整機構がはたらき、吸収量や排出量は自然と調整されるため、基準値を超えることはほとんどありません。

ただし、基準値を下回るケースには牛さんの場合、ときどき出会うのです。

臨床の現場では

『基準値を下回ったのは吸収量が減少しているからではないか』

という考えにいきつきます。

塩素イオンは食塩に含まれています(食塩の化学式はNaClで、ナトリウムとクロールで構成されていることが分かります)。大量に摂取する必要はまったくないので、牛さんの場合は鉱塩を設置していれば、そこから十分な量を摂取することができます。

では、なぜ吸収量が減少するのでしょうか。
鉱塩があれば簡単に摂取できるし、実際この患畜の部屋にもきちんと設置されています。
なめていれば吸収してるから吸収量は減らんでしょ?

つづく

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