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笹崎直哉のコラム
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2016年10月17日

 皆様お疲れ様です。季節は秋にはいりましたね。最近は往診中にご家族で稲刈りをしている農家さんの光景をよく目にします。そんな中、私はというとフルマラソン出場まであと数日となり、暇を見つけては走りこんでいるところです。正直なところ完走できる自信がありませんが、最近は涼しい気候ですのでモチベーションが上がり練習は捗っています。ゴールしたときの達成感を楽しみに残りの練習がんばります!!

 さて本題に入ります。私は初回のコラムで「今年は基礎、基本の習得を目標に毎日の視診、触診、聴診 etc…を怠らないように頑張りたい」と書きましたが、具体的に何に注意して診療しているか、「視診」にターゲットを絞って、今回は「牛さんの角」について紹介しようと思います。
 では下の写真をご覧ください(._.)(._.)

この角の持ち主は1歳齢の肥育素牛(去勢)です。この角をよーく見てみると、、、三本の溝ができていますね。私は最初の頃「これなんだ?どこかぶつけたのかな」とあまり気にしていませんでしたが、実はこの溝は「強いストレスの証」なのです。動物はストレスによって体のいろんな場所が傷ついたり、お腹の調子が悪くなったり、病気への抵抗力が落ちますが、牛さんはそういったストレスの背景を角に残してくれます。この肥育素牛の場合は手前の溝から順に(あくまでも私の予想です 汗 )
①導入時のストレス(輸送と群編成によるストレス??)
②去勢時のストレス(溝の位置からして6か月齢前後に去勢を行っている??)
③離乳時のストレス(溝が深いので離乳後の食い込みやハッチ卒業時で失敗した??)
が背景にあったのではないかと思います。ちなみに導入時の群編成ストレスは意外にも強いストレスを受けると言われています(群れを作るときに牛さん同士で喧嘩をし、強弱をはっきりさせるからでしょうか)。

 それでは次の写真はどうでしょう(._.)(._.)

この角の持ち主は1歳半の肥育牛(去勢)です。この角はもちろん溝があるのですが、全体的にガサガサしているし、ツヤがないですね。実はこの牛さんは当時肺炎という診断名で治療を長くしていました。しかしこの牛さんは導入前の生まれ育った農場でも様々なストレス暴露は強かったのではないかと思います。このような角を持った牛さんに対して治療を試みる場合、ストレスによる血中ビタミンAの低下を考えて、ビタミンの補給が推奨されますが、こういった角を持つ牛さんが多い場合、私は一度立ち止まって、ビタミンの補給よりもまず先に群編成の仕方や状態は大丈夫か(密飼いになっていないかな、部屋は暑いかな、病気は広まってないかなetc…)を考えるように気をつけています。

それでは次の写真は、、、

つづく

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