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戸田克樹のコラム
第103話「こんなときの血液検査②~食欲がないPart 2~」

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2016年9月21日

台風16号が過ぎ去りました。
 診療所のある阿久根市は夜間に大雨やときおりの突風が吹きましたが、1夜あければすでに晴れ間もでており、大きな被害はありませんでした。戸田の故郷宮崎県では甚大な被害が出てしまいました。地元の都城市でも河川近辺の住宅に浸水被害が出たという記事もありました。幸い実家は車庫の屋根が一部飛ばされた程度だったようです。甚大な被害を受けた方もいらっしゃることと思います。復旧作業など、今後もしばらくはご苦労も多いとは思いますが、普段通りの何気ない生活が1日でも早く戻りますよう、お祈りいたします。
 
 
 好酸球の増加がサシバエによる咬刺が原因であろうと推測され、「しかしそれでは食欲不振にまではならないだろう。他に原因があるはずだ。」となりました。
 さて、ここからは食欲不振の原因になりそうな検査項目を考えてみましょう。

 ポイントは
 ①患畜が妊娠している
 ②予定日があと1週間後に迫っている
 という点です。

 ②については、「過大子牛による消化管蠕動運動阻害」も食欲不振の原因として推測されます。お母さん牛のお腹の中に、Big Babyが入っていれば物理的な圧迫により消化管がうまく動かなくなってしまうことがあります。分娩を控え、子牛が背側に上がってくるという位置の変化も関係しているのでしょう。その結果、食べたものがおしりの方までスムースに流れないいわゆる「食滞」の状態が生理的にできてしまうのです。

 もし「いつもの半分くらいは食べてくれる」、「粗飼料の裁断長を短くしたら少し食べる量が増えた」、「ペレットは残すけど、粉末飼料は食いつきがよかった」など、食欲不振が軽度あるいはエサを変えれば食べてくれそうな状態で、なおかつ予定日が近い場合はお産を待つのもひとつの手段です。

 分娩後に食欲が完全に回復した症例もありますし、「お産前は子牛が母牛の食欲に影響を与えるケースもある」というのは頭の片隅に常において診療にあたっています。もちろん、お産前の母牛すべてにこれが当てはまるわけではありませんのでご注意を!

 では、Big Babyが原因でない場合は血液検査のどの項目に着目するのがよいのでしょうか

つづく

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